久留米の市街地に立つ診療所の計画である。
昨今、街を歩くと大きな窓ガラスに演色性の高い照明で高級感や非日常感を演出したクリニックをよく見かける。確かに人目を惹くし、患者を集める上でも効果が高いのは事実だと思う。それはそれで素晴らしいのだが、診療所とは肉体的、精神的に弱っている者が訪れる場所である。そのような場所が本当にふさわしいのだろうか。自分が設計するのであればもっと違った姿にしたいと常々考えていた。
幼い頃、母に連れられ近所の診療所に行った。田舎町には珍しい鉄筋コンクリート打ち放しで、大きな窓ガラスの人目を惹く建物であった。しかし高熱にうなされていた私には眩しいくらいに明るい待合室や、プラスチック製で硬く、背もたれが低い椅子はとてもつらく感じられた。
「病院」は旅人や病人を保護したり宿泊させる場所として、中世ヨーロッパの修道院などから派生した。その歴史的事実からもわかるように、診療所に相応しいのは修道院や教会のようなおおらかで懐の深い場所なのではないだろうか。人目を惹いたり物珍しいという事も確かに重要かもしれないが、それよりも患者が心身ともに落ち着き、気軽に通えるような場所を作ることにもっと力を注ぐべきなのではないだろうか。そのような思いと共に設計を進めていった。
敷地は幹線道路沿いにありL字型の形状で、その中に建物、駐車場、車路等をどのようにおさめて行くかが大きな課題となった。敷地形状や駐車場配置等を考慮すると、建物は道路から少し奥まった配置となった。道路からの視認性は自立看板で確保し、建物外観は落ち着いた色合いで品を保ちつつも、どこか親しみの湧く表情を持たせた。出入口のガラスドアは、室内の雰囲気が外を歩く人々に伝わり、内部においては北の安定した光を適度に取り込む寸法形状を検討した。室内は昼光利用を考慮した窓面積を確保しつつも、ブラインドを適切に設けることで、柔らかな光に包まれた空間となるよう配慮した。また、過度な明るさとならないよう照明の色や数量を調整し、高天井部分は壁持ち出し照明とすることで電球の交換やメンテナンスに配慮した。
クライアントの要望を満たしながら機能性を追求することは元より、建築的な諸条件等を勘案しながら、患者の実情に配慮した空間を目指した。
Outline
- 構造
- Wood
- 場所
- 福岡県久留米市
- 床面積
- 280.65㎡
- 敷地面積
- 961.99㎡
- 工事種別
- 新築
- 規模
- 地上2階建
- 竣工
- 2025.09
Credit
- 設計:
- セカンドデザイン一級建築士事務所
- 写真:
- Sho Iwanaga